ここしばらく、通勤電車である本を読んでいます。
塩野七生 ローマ人の物語
古代ローマ帝国の興亡について描いた長編物語。今は9巻の途中まで読んでいます。
そして今読んでいるところの主役はユリウス・カエサル、人類の歴史が生み出した史上最強のチートキャラと言っていいお方です。この人物を描くにあたって筆者である塩野さんは
「カエサルについて描く作者はみな彼に魅せられる」
と、さも他人事のように書いていますが、あなたもめっちゃ魅了されてますよとツッコミを入れるのはたぶん礼儀というものなのでしょう。
まだまだ彼の人生全盛期までは読んでいないのですが、とりあえず思う事
「天才(変態)の生き方は参考にならない」
とりあえず序盤でそう思ったエピソードを二編ほど紹介
カエサル最初の結婚は18歳(当時としてめっちゃ早婚)、相手は有力な政治家だったキンナという人物の娘。
しかしキンナは事故死、その後キンナを骨の髄まで憎んでいるスッラがローマの権力を完全掌握。
権力を手にし、元老院体制の再構築という夢と野心に燃えるスッラは政敵を次々に粛清開始。手にした粛清ノートに名前を書かれたら誰もそれから逃れられない、まさにリアルデスノート。
キンナの娘婿だったカエサルもリストに乗るものの、まだ何の政治活動もしていない18歳の若者に対して擁護の声が殺到しスッラもしぶしぶデスノートからカエサルの名前を削除。
でもとりあえずキンナの娘とは離婚しろと勧告(≒命令)、みんな当然それは受けるだろうと思っていたら…
スッラ、激怒
カエサル、東に向けて全力疾走
それでもここまでなら美しい夫婦愛の物語だけど、青年期のカエサルがまず有名になった理由が
女癖の悪さ
だったりするのでフォローに困る
その後スッラが死に、ローマに戻り弁護士事務所を開業したカエサル、しかしスッラに喧嘩を売り、そのシンパがまだまだ勢力をもっているときに大物政治家告発してもめ事起こし、ちょっと雲行きが怪しくなってきたからとほとぼり冷ますためにロードス島にある大学へ留学の旅へ。
しかし留学に行く道中で船が海賊に乗っ取られて人質に
カエサルを見た海賊、「お前の身代金は八千万(概算)だ、命が惜しけりゃ八千万用意しろ」と要求。それに対するカエサルの返事は
「お前ら誰を拉致ったと思ってるんだ」と逆切れ
自分で身代金の設定を二億に増額
さらに人質やってる間も海賊の訓練に交じったり、海賊にスピーチの聞き手やらせたり、挙句の果てには
「お前ら全員縛り首にしてやるからな」
と脅してみたりとやりたい放題。あんた、マジで命が惜しくないのか。まあこのエピソードも、カエサルファンの塩野先生にしたら全て計算づくらしいんですが。
ともあれ二億払って自由の身になったカエサル、すぐに近くの町に行き、若い衆を集めて
海賊のアジトを襲撃
全員捕虜にし、地元知事から裁判権ゲットした上で予告通り全員絞首刑
…よく本屋では歴史上の人物の名言を集めて特集記事にした雑誌とか、誰それに見る組織の構築とか誰それに見る人生論とかいう本が置いてあります。でも、所詮彼らは人外です。素人が真似しちゃいけない存在です。あくまで、ああ昔はそういうすごい人がいたんだなあと遠い憧れをもって眺めるのが、そういう書物の楽しみ方だと思います。